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背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第2章 月明カリノ下デ


 それから10年弱経つ間、何度か恋をしようと試みたけれど、思っていたよりあの人の残した傷は深くて、なかなか相手の人を信じる気持ちにはなれなかった。

 ほんの少しでも気に掛かることがあると、それ以上想いを募らせてはいけないと自分に言い聞かすように胸元を引っ掻き、相手に背を向けた。

 傷つくのがこわかったのだ。

 そんなわたしをいぶかしく思ったのか、相手の人はそれぞれに、わたしの元から立ち去って行ってしまった。

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