
血とキズナ
第1章 約束のカギ
◆ ◆
結局、入学式に出なかったことへのお咎めはなかった。
きっと入学式に出ない生徒は、一人や二人じゃないのだろう。
今日は入学式だけで学校は終わり。
新入生たちは、好き勝手に帰宅していった。
「リツ、お前通いだろ?」
「いや、寮だよ」
霧金は、通いか寮を選ぶことができた。
リツの家だった所は、霧金から駅3つほどで、問題なく通える距離だった。
入寮する利点は、まったくと言っていいほどない。
しかしリツは寮を選んだ。
というより、もともとリツには選択肢などなかった。
「マジかよ! 柏木なんてすぐ近くじゃんか。なんで寮なんだよ」
「なんでって、なんか悪いのか?」
リツはカバンを担ぎ、教室を出る。
その隣で、佐山がまた声を張り上げていた。
「悪いも何も、ここの寮はほぼ無法地帯だぜ。
ケンカも盗みも日常茶飯事。
そんなところに柴鳳のカギなんて持ってる奴が入ったら、ライオンの檻にウサギが入るようなもんだぜ。
あっという間に食われちまうよ……」
あわあわと頭を抱える佐山。
それを他人事のようにで見つめていると、ふいに肩口を殴られた。
「たく、お前はなんでいっつもわざわざメンドクサいほうに行くんだよ!」
「知らねえよ。俺だって好きでメンドクサいことしてるわけじゃ」
「カギ返すためにこんな学校に来たこと自体がもうメンドクサいっつうの」
