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血とキズナ

第1章 約束のカギ

「明日斗くんが持ってたあのカギ知ってんだろ? 紫色の羽が付いた。
 どこにあるか知んねえかなと思ってさ」

 リツはポケットに手を突っ込んだ。

「ああ。それなら、俺が持ってるけど」


 リツの答えに、中林の表情がくもった。
 それによって、さらに人相の悪さが際立つ。

 中林はすぐに表情を戻したが、その愛想は引きつっているように見えた。


「そりゃよかった。
 あれは俺たちにとっても大切なもんでさ、施設の人に聞いてもわかんなかったし、どうしようかと思ってたんだ」


 踵を履きつぶした上履きで、中林がずりずりと歩み寄ってくる。


「サンキュー、助かったぜ」


 そう言って、中林は手を差し出してきた。

 そのゴツい掌を、リツは見つめる。
 しかし、その手の示している意味がわからなかった。


「なにしてんだ。早くよこせよ」

 顔を上げ、中林の顔を見た。

「なんで?」

「は?」

 中林の表情が戸惑う。

「それは俺らのだ」

「違えよ。明日斗のだ」

「同じだろうが」


 ――同じ?

 言っている意味が分からなかった。


「お前は知らねえだろうがな、それは柴鳳って族のトップの証だ。
 明日斗くんはそれをトップの東条さんから譲り受けた。

 それがどういう意味だかわかるか?

 明日斗くんは、次期柴鳳のトップになるってこった」

「だから?」


 中林の口がまごついた。

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