血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「リツ、10時になったから上がんな」
「はい」
リツがトイレの掃除をしていると、店長がわざわざ声をかけにきてくれた。
「お、リツ、お前掃除うまいな。ピカピカだ」
「ふつうだと思いますけど」
「いや、お前霧金の校舎知ってんだろ? あそこに掃除ができる奴なんざひとりもいねぇよ」
茶髪に金のメッシュが入り、屈託のない顔で笑う店長。
年は27、8に見えるが、実はもう35らしい。
しかもこの人、霧金出身らしい。
面接のときチャラい人だなあとは思ったが、まさかこんなオチとは、開いた口がふさがらないとはまさにこのことだ。
――ま、おかげで雇ってもらえたのかもしれないが。
再度リツは店長に声をかけて、客のいない店内を抜け、レジにいるもうひとりの先輩店員にも声をかけた。
「リナさん、お先にあがります」
「なに、もう上がり? え~、つまんない」
レジ前ですねた顔をしているリナさんは、21歳の女子大生。
背中まで伸びた茶髪のストレートヘアが印象的の、可愛らしい女性だ。
「はは、つまんないってなんですか」
「だって、なんかリツくんて癒されるんだもん。初々しいしさ。
リツくん何歳だっけ」
「今年16です」
「16!? わっか!
いいなぁ~、私にもそんな時期があったなぁ」
「リナさんだって十分若いじゃないですか」
「うっさい16! 子どもはさっさと帰れ!」
「お疲れさまでーす」
シッシッと追っ払われたリツは、レジの裏に引っ込んだ。