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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 





 十数人という大所帯で駅のゲーセンを占領していたチーム紫鳳だったが、リツが鴇津と途中早退すれば、佐山がそこにいる意味はなくなった。

 元々佐山は紫鳳と一切関係はなく、リツと一緒にいたら、本当にいつの間にかチームの輪に入り込んでいただけなのだ。

 リツがいなくなれば、そこはあっという間にアウェイとなる。

 リツが帰ると同時に帰ってしまいたかったが、リツにはもれなく鴇津がついてくる。
 リツと鴇津というコンビは、それは非常に目立つのだ。

 そこにくっついて帰る勇気は毛頭なく、結局誰にも何も言わずこっそり帰ってこれたのは、7時を回った頃だった。

 端からチームと関係ない自分が「帰ります」と報告する勇気がでなかったのだ。

 関係ない人間がどうでもいい報告してくんじゃねぇ! と嫌な顔をされるかもしれない。

 しかし何も言わずに帰ったら帰ったで、挨拶もないなんて何様だ! と言われるかもと、結局小一時間はうだうだと悩んで、結局声をかける勇気がなく、逃げるように帰ってきた。

 自分てちーせーなぁと改めて情けなく思いながら寮までくると、寮門の前にスーツ姿の男が立っていた。

 その男は、前にも一度見たことがある。

 たしか帰ってきたらリツが頭に包帯を巻いていた日。
 その日もこの真面目そうな男は寮を仰ぎ見ていた。

 パリッとしたスーツに、ノンフレームの眼鏡をかけた若い男。
 霧金の生徒とは真逆にいるような人間だったからよく覚えている。

 スーツの色は前の時とは違うが、ひ弱そうな体格はスーツの上からでもわかった。

 こんなところで何度も居座ったら、どうしようもない霧金生に集られることになるだろう。

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