血とキズナ
第1章 約束のカギ
冬の厳しい冷気がゆるみ、春の兆しがやってきていた。
大通りに出れば、桜はすでに散り始めている。
しかしリツの部屋にかけられたカレンダーは、2月のページから捲られていない。
着慣れた学ランは畳んで床に置いてあり、今日からはブレザーを着て登校する。
グレーのブレザーに腕を通し、青いネクタイをしめるとスクールバッグを肩にかけた。
くるっと、自分の部屋を眺める。
ベッドと勉強机、小さい本棚。
部屋の隅には、あとで叔母さんたちが楽に捨てられるように、小中学校の教科書や作品を束ねて置いておいた。
6年間世話になった部屋。
もう二度と帰ってくることはない。
だが名残惜しさや、感慨深さはあまりなかった。
引き出しの中まできれいに片づけた勉強机の上に、一つ残された紫の羽がついたカギを、リツは握りしめた。
スクールバックとカギ。
あとはもう何もいらない。
最低限の日用品は、すべて送った。
リツはカギをブレザーのポケットに突っ込み、部屋を出た。