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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 そして流星は、想像以上に衝撃を受けたようだった。

 眉を下げ、悲愴な表情で俯いている。


「リツは、ずっとそんな風に、思ってたのかな」

「さあな」


 泣き出しそうな表情を浮かべる流星に、鴇津は遠慮なく言った。


「それで、実のところそうなのか」

「違う! そんなことあるわけない」


 流星は、必死で否定する。


「確かに僕は、罪も責任も感じてるけど。
 リツとは血も繋がってないし、本当の兄弟じゃないけど。でも、たった一人の家族だ。
 僕にはもう、リツしかいない。構うのは当たり前だ」


 人なんて、信用できない。

 見た目。言葉。

 そんなものは、簡単に繕える。

 家族のいたことがない鴇津にしてみれば、流星の言葉など、偽善にしか聞こえない。

 もし自分の周りに流星のような人物がいたら、鬱陶しくて仕方がないだろう。

 リツの気持ちは、よくわかる。

 よくわかるはずなのに。

 今、鴇津の心情は、リツのほうではなく、流星側にあるのだ。

 リツの言っていることより、流星の言葉が、すっと胸に落ちてくる。

 偽善の塊のようなこの好青年に、絆されている。

 彼の偽善を、鴇津は信じてしまっている。

 流星のリツに対する思い。
 それは、罪悪感などではない。

 でも、それがリツには伝わっていない。

 空気が読めないようで、実は誰よりも人の気持ちに敏感なリツ。

 それなのに、兄にはこんな態度。

 そんな兄と会わせたら、リツはどんな反応をするだろうか。

 鴇津はもう一度、流星を呼び止めた。





 

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