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血とキズナ

第9章  

 幾重にたたまれ、2センチ四方ほどになったそれを、リツはつまみ上げた。

 開いていくと、一番上に “綾野リツへ” と書いてある。

 どうやら自分宛ての手紙のようだ。

 そして一番下に “東条” と書かれている。
 リツは少し驚いた。

 意外に思いながら読み進めると、

 ーー大事な話がある。今日の18時、ここに来てくれ。

 と書かれ、余白に地図が書かれていた。

 そして、

 ーー他人に聞かれたらマズイ話だ。誰にも言わず一人で来てほしい。

 今日は紫鳳で緊急の集会があったはず。
 それなのに別件の呼び出し。

 どんな用事だろうーーと、リツは手紙をもとの通りにたたみ直し、ポケットに入れた。

 誰にも知られたくないようだから、この手紙を間違っても落とさないように。



 全ての授業が終わり、みな各々教室を出て行く。

 リツも空っぽのカバンを肩にかけた。

 この学校で優等生という部類のリツだが、教科書はすべて机やロッカーに置きっぱなしだった。

 宿題も出ない学校で、教科書をいちいち持ち運ぶのは無駄なことだ。


「リツ、お前今日バイトだっけ?」

「ああ」


 寝ぼけ眼の狭山が聞いてきた。

 バイトがあるというのは嘘である。

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