血とキズナ
第2章 腕
「よし。
じゃあ――、トキ」
東条が呼んだのは、赤いソファに座って、ただ一人、今までのいざこざに首を出していなかった男だ。
気づかなかったが、彼も東条に負けず劣らずの眉目秀麗な男だ。
アッシュ系の明るい茶髪で、長めの前髪は下ろしているが、後ろ髪はくせ毛のように跳ねている。
「今日からお前が面倒見な」
東条の言葉に、周りはざわつく。
「ああ」
しかし当の本人は、あっさりと了承した。
それに対し、さらに周りは騒がしくなっていく。
「あいつは鴇津凌一。うちの学校の2年だから、何かあったらあいつに言いな。
まあ、相談に乗ってくれるかは、あいつ次第だがな」
トキツ リョウイチ――。
彼はリツと目を合わせると、すくっと立ち上がった。
イヤホンを外しながらリツの前に立つと、床に落ちたカギを拾い、リツのポケットに入れた。
「病院連れてってやる。来な」
東条以上に表情のない顔で、鴇津は言った。
「あ、はい」
立ち上がると、右腕に痺れるような痛みが走った。
少し動くだけで、右腕はその衝撃をもろに受ける。
腕を庇いながら、リツは鴇津のあとについて、“時雨”を出た。