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血とキズナ

第2章 腕

「……へへへ。いいですよ。
 腕でも足でも、なんなら顔もあげますよ。
 だから、これは、俺に返させてください。――お願いします」

 リツは床にへたり込みながら、頭を下げた。

 東条は何も言わない。

 リツも、頭を下げたまま微動だにしなくなった。

 そしてすっと、東条がリツの手から足をどける。
 顔を上げると、東条はリツの前でカギを拾った。

 リツは東条を見つめる。

 東条も、リツを見下ろす。

 そして東条は、再びカギをリツの目の前へ落とした。


「これで、お前にも“貸し1”だ。
 それが返せたら、明日斗のカリも受け取ってやる」


 ふっと、東条の顔が柔らかくなった。
 今までの無表情がウソのように、優しげな好青年の顔になった。

 しかしそれも一瞬で、すぐにきりっと引き締まった表情に戻る。


「お前らも聞いとけ。
 これからカギは、リツに預けとく。
 が、別に柴鳳に入れるわけじゃない。
 だから、こいつのために柴鳳は動かないし、お前らも何かしてやる必要はない。
 ただ、もしこいつがカギを誰かに奪われるようなことがあったら――そんときはわかってるな?」


 東条がリツを睨む。

 リツは腕を庇いながらなんとか上体を起こし、頷いた。

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