血とキズナ
第3章 ノウテンキな男
“時雨”での一件から1週間がたった。
結局リツの右腕はきれいに折れていて全治1ヶ月と診断された。
今はギプスを三角巾で吊された姿で、体育の授業に出ている。
サッカーの授業のはずだが、真面目に受ける生徒が少なすぎて、見ればフットサルになっていた。
見学のリツは、それを横目に黙々とリフティングに勤しんでいた。
ただじっとしているのは退屈すぎる。
「ふぃ~、疲れたぁ」
フットサルに参加していたはずの佐山が、校庭の端にいるリツのところへ駆け寄ってきた。
「いいのか? 抜けてきて」
「いーのいーの。10分も走ったらもうシンドくて」
佐山は地面に座り込む。
「頭も悪いのに運動もダメなのな」
「うるせえっ。
そういうお前は両方できるよな」
鼻の穴を膨らませながら、佐山は言う。
リフティングをしながら、リツは佐山を見た。
「俺は、別にふつうだよ」
「その状態で言うかっ」
リツは笑いながらボールを蹴り上げ、頭で受け止めた。
「そういやリツさ、バイトのほうはどうなったんだよ」
「いやー、それが全然」
へらっと笑いながら、リツはヘディングを続ける。