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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 リツはじっと鴇津の視線を見つめ返した。
 鴇津は瞬きもせず、静かな、それでも狂暴な光を宿して、リツを睨みつけていた。

 東条に似てると、リツは少しおかしく思った。


「じゃあ、これからも逃げ続けたら、鴇津さんはそうしますか?」

「俺がそうすると言ったら、ヤるのか?」

「いえ、やらないです多分」


 鴇津はリツの中を探るように、ポーカーフェイスを崩さない。


「でも、あなたからは逃げられそうもないので、そん時は抵抗させてもらいます」


 リツの回答に、鴇津は煙草の煙と一緒にため息を吐いた。


「わかった、もういい。行け」


 鴇津の視線が冷め切っている。
 それを知ってか知らずか、リツは「はい」と脳天気な顔で屋上を出て行った。





 鴇津は空めがけて息を吐いた。

 紫煙が、からっと晴れた空に吸い込まれていく。

 ひとりで紫鳳にケンカを売り、東条に認められた男。

 身の安全よりも意地を優先する、考えていることもぶっ飛んだ馬鹿。

 そんなバカさ加減に、鴇津は興味を持った。

 だからこそ、面倒見なんてメンドウな役を引き受けたのに、蓋を開けてみれば、ソイツはただの平和馬鹿だった。

 カギのためなら、何でもするような意志の強さを感じたのに、この1週間、ソイツは逃げ回っている。

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