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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「なんでヤらねえんだ?」

「いや、だってみんな強そうなんですもん」


 へらへらした顔で、リツは言った。


「紫鳳の幹部クラスを一瞬で8人もヤった奴の台詞とは、思えねえな」

「あの時は、他に方法がなかったんで」

「全校生徒に、腰抜けだって思われてんだぞ。それだけの腕持ってて。
 ムカつかねえのか?」


 リツがきょとんとした表情を浮かべた。
 だがその顔は、すぐにへらっと戻る。


「俺は明日斗のカリが返せれば、それでいんで」


 鴇津は肺に、大きく煙を吸い込んだ。
 そして大きく吐き出す。

 一気に煙草が灰へと変わる。


「そんなんで、東条へのカリが返せると思ってんのか?」


 リツの脳天気な表情が、少し曇る。


「お前、ケンカ嫌いか?」

「まあ、好きではないですね」


 再び鴇津が煙草をくわえる。
 次に出てきた声は低く、リツを脅すようだった。


「調子のいいこと言ってんじゃねえぞ。
 テメエは、明日斗って奴のカリを返すって言ってきた時点で、そんなこと言える立場じゃねえんだよ。

 そいつが、暴力なしにカギを返す気だったと思うか?
 どんなヌルい人生送ってきたかは知らねえが、テメエが入ってきたここは、暴力だけがすべての世界だ。
 あんま甘いことばっかやってっと、俺がそのカギ取るぜ」

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