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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会

 しばらく素肌の上をさまよっていたかと思うと、悪戯な指は更に下降して胸の先端を掠める。その刹那、触れられたわずかな箇所から妖しい震えが生まれ、身体中に走った。
 まるで小さな雷土(いかづち)が身体の隅々を駆け巡ったかのようだ。こんな感覚は今まで知らなかった。
「しかも、そなたはミヨンの娘だ」
 その何気ないひと言に、キョンシルはハッと我に返った。
「お母さんと私は全く別の人間よ。まだ、お母さんを愛しているの?」
 トスの貌を覗き込むと、彼は淡く微笑した。
「今はそなただけだ」
 微妙な表現ではあったが、それは彼がミヨンを愛していたのは過去であり、現在は違う―キョンシル一人だと明言したのも同然であった。

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