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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

「なあ、お前が望むのなら、事が済んだ後、俺が旦那さまに生命乞いをしてやっても良い。俺の女になる気がありゃア、旦那さまがさんざ愉しんだ後で、俺が頼んでみてやるよ」
 この男なりにキョンシルを気遣っているつもりなのだろう。
 男が立ち上がった。
「生きるためにも、食う物は食っておいた方が良いぜ。今夜は旦那さまは妾の許に行って帰ってはこないはずだから、安心して寝ろ」
 どうせ愚かな娘のことだから逃亡を企てもしないだろうと油断しているのか、それとも、キョンシルを憐れんでいるのか、男は意外にもキョンシルの手を再び縛り上げようとはしなかった。猿轡もしなかった。

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