
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
念を押され、キョンシルはコクリと頷いた。
「でも、おじさん。崔氏って、そんなにたいそうな家なの? 別にどこにでもあるような名前だけど」
キョンシルの問いは、いかにも下町で生まれ育った子どもらしい無邪気なものだ。トスは慈しみに溢れた微笑にかすかに苦さを滲ませた。
「確かに姓氏としては特に珍しくはないが、ミヨンの言っている崔氏は、並の崔氏ではない」
「並の崔氏ではない? それって、どういう意味なの」
トスは何かを思い出そうとするかのように眉根を寄せた。
「崔氏の現当主は崔一載(チェイルチェ)どのだ。この方は既に高齢で現役からは退いているが、五年前までは錚々たる重鎮がひしめく朝廷で重きをなしていた方だ」
「でも、おじさん。崔氏って、そんなにたいそうな家なの? 別にどこにでもあるような名前だけど」
キョンシルの問いは、いかにも下町で生まれ育った子どもらしい無邪気なものだ。トスは慈しみに溢れた微笑にかすかに苦さを滲ませた。
「確かに姓氏としては特に珍しくはないが、ミヨンの言っている崔氏は、並の崔氏ではない」
「並の崔氏ではない? それって、どういう意味なの」
トスは何かを思い出そうとするかのように眉根を寄せた。
「崔氏の現当主は崔一載(チェイルチェ)どのだ。この方は既に高齢で現役からは退いているが、五年前までは錚々たる重鎮がひしめく朝廷で重きをなしていた方だ」
