テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

「朝廷? では、国王(サンガン)さま(マーマ)にお仕えする官吏だったの?」
 トスは崔氏の歴史をかいつまんで話してくれた。
「つまり、私の祖父だという崔イルチェという人は礼(イエ)曹(ジヨ)判(パン)書(ソ)を務めて、そのお父さんはえっと、何だったかしら」
 トスが笑いながら言い直した。
「領(ヨン)議(イ)政(ジヨン)だ」
「領議政、そう、その領議政を務めた人なのよね。で、その領議政を務めたひいおじいさんの弟が国王さまの娘を妻に頂いて、子どもこそ生まれなかったけれど、一時は王室の外戚となった」
「そうだ。ゆえに、崔氏は並いる両班(ヤンバン)の中でも名門中の名門だといえる」
「何だか私には縁のない遠い世界の話ねえ」
 のんびりと言うキョンシルは、他人事のような表情である。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ