テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 都漢陽のあちこちに薄紅色の桜が咲く季節がめぐってきたある日、崔イルチェは眠るように息を引き取った。最愛の孫娘の祝言にも連なるほどの回復ぶりを見せていたのだが、はやり、病には勝てなかった。
 恐らくキョンシルの祝言を見届けるまでは死ねないという不屈の意思が彼を支え、一時的とはいえ、奇跡的な回復を遂げたさせたのだろう。実際、このままもうイルチェは病を克服するのではないか―、誰もがそう思うほど、イルチェは元気になった。
 しかし、それはやはり、今にも消えようとする蝋燭が消える寸前、ひときわ明るく大きな焔を燃え上がらせるのにも似ていたのかもしれない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ