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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

「利発なそなたのことだ。俺がいちいち言わずとも、もう判っているだろう? ソンニョはキョンシルに崔氏の娘として生きていって欲しかったんだよ」
「そんなのって!」
 キョンシルは叫んだ。
 トスのやや切れ上がった細い眼(まなこ)が真っすぐにこちらを見つめている。キョンシルはその視線を受け止めきれなくて、うつむいた。
「そんなのって、あまりにも勝手すぎる」
 ふと思い出して、キョンシルは首を振った。
 母は言ったのだ。
―私がずっとこの先も元気でいたら、お前に真実を告げる気はなかった。でも、こうなったのも、やっぱり仏さまのお導きじゃないかと思ってね。
 ミヨンは元々、キョンシルに出生の秘密を告げる気はなかった。

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