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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 キョンシルは、やはり母のあのときの科白の続きを呟いた。
―お前は名門崔氏の血を引く、たった一人の娘だもの。きっとチソンも、お前のお父さんも、お前に本来お前がいるべき場所に帰って欲しいと願っているんではないかと思ったんだ。
 トスが静かに言った。
「ソンニョが言いたかったのは、最後の方の科白だと俺は思うがな、キョンシル。そなたは、崔氏の直系の血を引くただ一人の人間だ。傍系の男子がいるにはいるが、そなたに比べれば、血は薄い。それに、現当主のイルチュどのは最早、六十代半ばで、後継者たる男子が一人もいないのだ。正当な後継者が現れれば、どれほど歓ばれることだろう。そなたが家門を継げば、崔氏は脈々と続いてきた名門の血を次代に繋げられる」

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