側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第2章 哀しみはある日、突然に
母が今度、新しい良人となる道(ト)洙(ス)と出逢ったのは、今から四年前に遡る。トスは自称〝流れ者の剣士〟だ。キョンシルはトスが都に来る前に、どこで何をしていたのか知らない。いつも朽ち葉色の地味な装束を身につけ、長い髪を結いもせず革紐で無造作に一括りにしている。その長身の背中には常にひとふりの長剣をしょっていた。
自らの存在すら消してしまうかのような静謐さを纏っている男であった。その癖、ただそこにいるだけで圧倒的な存在感を放っている。
トスが発する空気というのは、彼をよく知る人間には限りなく研ぎ澄まされた空気だし、彼の人柄に疎い者にはある種の殺気と感じられる。
自らの存在すら消してしまうかのような静謐さを纏っている男であった。その癖、ただそこにいるだけで圧倒的な存在感を放っている。
トスが発する空気というのは、彼をよく知る人間には限りなく研ぎ澄まされた空気だし、彼の人柄に疎い者にはある種の殺気と感じられる。