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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

「あ―」
 キョンシルは悲痛な声を上げ、烈しく首を振ってトスを拒もうとした。
 あまりに長い口づけは呼吸すら奪うような激しさで、キョンシルは息苦しさにもがいた。しかも、唇は一旦離れたかと思うと、またすぐに重なる。
 空気を求めてわずかに開いたその隙を狙って、トスがキョンシルの口中に舌を差しいれてきた。
―な、なに、何なの?
 まだ口づけどころか、同年の男の子と手を握ったこともないのだ。むろん、男女の睦み合いについて具体的なことも知らない。その手の知識は、たった一度だけ、トスと母ミヨンの烈しい抱擁と口づけを見たことがあるだけだ。

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