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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

が、次の瞬間、トスはキョンシルが飛び上がるほどの大声で言った。
「それは違う」
「トスおじさん―」
 今度はキョンシルが訝しげにトスを見つめた。
「キョンシルは勘違いをしている。あんなことをしておいて今更な科白だが、そなたは昼間、俺に言った。自分がソンニョのように美しくもないし魅力的でもないと。しかし、そんなものはキョンシルの勝手な思い込みだ。そなたには、そなただけの魅力があるし、俺はキョンシルを可愛いし、美人だと思っているぞ」
 最後はトスらしくもなく、紅くなりながら言った。どう見ても女を口説くのが得意そうでない男がここまでの科白を口にするのは、どれだけの勇気を必要としたことだろう。

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