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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 昼間、トスが間一髪の危ういところで思いとどまってくれたのは幸いだった。好きな男にでも無理に身体を奪われたくないという気持ちの他に、キョンシルには懸念があったのだ。 
 もし、けして越えてはならない一線を越えてしまったら、トスとキョンシルの関係は今までとは全く違うものになってしまう。男と女の関係になれば、今のように軽口をたたき合うことも、トスが気軽に髪を撫でてくれることもないのだ。
 裏腹に、互いにミヨンのことを意識してしまい、その関係は親密どころか、かえって気詰まりな緊張感の絶えないものになるだろう。
 一歩距離を置いた関係であり続ける限り、トスと気まずくなる必要はない。二人の間にミヨンの存在が大きな翳となってのしかかってくることもないのだ。

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