
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
トスは握り拳を固め、前に突き出して見せる。それが口だけなのは判っていた。トスはよほどのことがなければ、握り拳を使ったりはしない。トスがいつも愛用の長剣の手入れを怠らないのは知っていたけれど、現実に抜刀した試しはないのだ。
「おい、キョンシル。そなた、俺が冗談で言ってると思ってるだろう? だが、それはとんだ見当違いだぞ。そなたの連れてくる男に対してだけは、俺は情けも容赦もない」
そこでトスは苦笑いを浮かべた。
「なーんて、偉そうなことを言ってるが、義理の父親が娘に手を出そうとしたことがあるなんて相手の男に知られたら、逆に俺の方が叩きのめされそうだ」
トスは喋りすぎたと思ったらしい。赤らんだ頬を左手でこすり、とってつけたように続ける。
「おい、キョンシル。そなた、俺が冗談で言ってると思ってるだろう? だが、それはとんだ見当違いだぞ。そなたの連れてくる男に対してだけは、俺は情けも容赦もない」
そこでトスは苦笑いを浮かべた。
「なーんて、偉そうなことを言ってるが、義理の父親が娘に手を出そうとしたことがあるなんて相手の男に知られたら、逆に俺の方が叩きのめされそうだ」
トスは喋りすぎたと思ったらしい。赤らんだ頬を左手でこすり、とってつけたように続ける。
