
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
「で、何なんだ。その一つだけ訊きたいって話は」
「トスおじさんは、どうして、都を離れようなんて考えたの? 新しい道を見つけたいと言っていたけれど、本当にそれだけだったの? やっぱり、お母さんの存在がそれだけトスおじさんにとって大きかったということなのよね」
トスはその問いには、曖昧な笑みで応えるにとどめ、返事らしい返事は返ってこなかった。
キョンシルにとっては素朴なというよりは必然的な疑問である。が、トスが押し黙ってしまったのを見て、彼女は己れの質問があまりにも相手の心に踏み込みすぎたのを悟った。
誰しも他人に土足で入られたくない心の禁域というものがある。キョンシルは不躾な質問をしてしまったことを恥じた。
「トスおじさんは、どうして、都を離れようなんて考えたの? 新しい道を見つけたいと言っていたけれど、本当にそれだけだったの? やっぱり、お母さんの存在がそれだけトスおじさんにとって大きかったということなのよね」
トスはその問いには、曖昧な笑みで応えるにとどめ、返事らしい返事は返ってこなかった。
キョンシルにとっては素朴なというよりは必然的な疑問である。が、トスが押し黙ってしまったのを見て、彼女は己れの質問があまりにも相手の心に踏み込みすぎたのを悟った。
誰しも他人に土足で入られたくない心の禁域というものがある。キョンシルは不躾な質問をしてしまったことを恥じた。
