テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 もとより、キョンシル自身にその自覚はない。キョンシルはまだ子どもだ。トスに対しても父親か兄の抱くような信頼を向けているにすぎない。だからこそ、トスが豹変して襲いかかったときには恐怖も人一倍だったろうし、打撃も受けただろう。
 いやと、彼は首を振った。キョンシルは子どもではない。彼の瞼に、豊かに成長した身体がありありと甦る。波打つ乳房は形もよく、十五歳という年齢にしては豊かな肢体をしている。既に身体は大人の女と変わらない。
 だが、彼女の心は不安定で、いまだに漸く大人の入り口にさしかかったばかりだ。
 彼の手には今も、キョンシルの身体に触れたときの感触が残っていた。恐怖と触れられた刺激のせいで、上を向いて尖っていた乳房の先端が胸に巻いた布越しにはっきりと見えていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ