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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

「これから幸せになるんだとしても、幸せになるのは私とトスだけじゃない。これだけはよく憶えておいておくれ。幸せになるのは三人じゃなきゃいけないよ? トスと私、それにお前、三人で新しい家族になるんだからね」
「お母さんったら」
 キョンシルの眼に新たな涙が浮かぶ。
「さあさあ、赤ン坊みたいに泣くのは良い加減にお止め」
「そうね、折角の花嫁衣装に涙がついてしまうわ」
 キョンシルはまだ洟をぐすぐすさせながら、母から離れた。
「服なんて、どうでも良いんだよ。でも、あんまり泣いたら、お前の眼が腫れちまうだろ」
 その母のひと言で、ますます涙が止まらないキョンシルである。

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