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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

「もう少しだけ、このままでいさせてよ。だって、トスさんの奥さんになったら、もう私だけのお母さんじゃなくなるんだもの」
 母にはまだ告げていないけれど、二人の祝言が無事終わったら、キョンシルはこの家を出てゆこうと決めている。母はまだ十分に子どもを望める歳だ。トスと結婚すれば、いずれは新しい子どもを授かるに違いない。 
 また、たとえ子どものことを考えなくても、十五にもなった継子がふた間しかない狭い家に居候していは、トスも気詰まりに決まっている。むろん、トスはそれを表に出すような人でないのは判っている。だからといって、母が折角掴んだ幸せに水を差すような真似はしたくない。

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