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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 キョンシルは微笑んだ。
「それは腹は立つわよ。でも、腹が立つというよりも、哀しくなる。私、一体ここで何やってるんだろうなって」
 思わず涙が滲んできて、キョンシルは慌てて手のひらで涙をぬぐった。ジュボクはそんな彼女を何とも形容しがたい顔で見ている。
「なあ、そんなに辛いのなら、俺の家に行ったら、どうだ? きっと親父もお袋も歓んでお前を迎えると思うぞ」
 キョンシルは予期せぬ話の展開に眼を見開いた。
「まさか。そんな厚かましいことできないわ。ジュボクのお父さんやお母さんにそこまで迷惑をかけられるはずがないでしょ」
 ジュボクもまたつられたように笑う。
「水くさいこと言うなよ。俺たち、友達だろう」

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