テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 先刻の短いやりとりでも、あの娘の聡明さ、思慮深さは判った。それに、優しさも備えている。態度にはやや粗野な面が見受けられるが、それは育ちのせいだと考えられないこともない。元々賢いのだから、教えてやれば、すぐに両班家のしきたりにも馴れ、それらしくふるまえるようになるだろう。
 何と、自分はあの娘を早くもこの屋敷に正式に入れる算段をしているのか!?
 イルチェは自分の甘さに呆れた。
 確かにあの娘はチソンの血を引いてはいる。しかし、同時に憎い女の生んだ娘でもあるのだ。それを忘れてはいけない。彼から息子を奪い、妻を哀しませ、ついには息子の寿命を縮めた邪悪な女宋ミヨンの娘なのだ。
 そう、忘れてはならない。キョンシルは顔はチソンに似ていても、自分から最愛の息子を奪った賤しい女の血を色濃く引いているのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ