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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 かといって、キョンシルへの想いは最早、止めるすべもない。三十の良い歳をした男が十五歳の娘を人知れず恋々と想い、胸を焦がしている。以前の自分が他人事として聞いたなら、情けない腑抜けた奴よと笑い飛ばしていただろう。
 トスは大きな息を吐くと、眼を凝らす。はるかに臨む水平線は、どこまでが海でどこからが空なのか、境界すら見極められない。まるで蒼い空と海が境目なく入り交じっているようにも見える。

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