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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 あの人気のない小屋の中で、トスは欲望も露わにキョンシルに飛びかかってきた。あのときのトスの視線は正直、今、思い出しても総毛立つくらい怖かった。
 今、トスがキョンシルに向けているまなざしは、あのときに彼が見せたものに酷似している。
 トスは、どうして、あんな怖い眼で見るのだろうか。十五歳といえば、結婚適齢期である。早い者は既に嫁いで母となっているというのに、キョンシルは男女の事となると、かなりの奥手だった。母美瑛(ミヨン)が生きていれば、いずれ嫁ぐ日にはそういった話も聞くことができたろうが、ミヨンは既にこの世の人ではない。

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