テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 トスが意味深に笑い、後ろのキョンシルを前に押しやった。
「流石は和尚だな。ご明察のとおり、我が娘です。キョンシル、和尚にご挨拶しなさい」
「初めまして、宋(ソン)キョンシルといいます」
「何と」
 和尚は愕いたとも呆れたとも言い難い複雑そうな表情で天を仰いだ。
「そなたは昔から悪戯好きの悪童だったからな。いずれ何かやらかすとは思っていたが、まさか、こんな大きな娘をこしらえて帰ってくるとは流石の儂も想像がつかなんだわい」
「あ、あの」
 何だか話の流れが事実とはほど遠い状況になりつつある。キョンシルは戸惑いながら、トスの貌をちらりと見、思い切って言った。
「和尚さま、違うんです。あの、私はトスおじさんの娘ではありません」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ