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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

「父上が和尚に何か言ったのですか?」
「息子をよろしく頼むと言われてな。ゆえに、もしや、そなたが近々、戻ってくるのではないかと思うていたが、まさか、こんなに早く現れるとは」
「そうでしたか、そのようなことがあったのですね」
 トスは和尚の話に感じるものがあったようで、感慨深げに頷いている。この旧知の間柄らしい二人の間には、キョンシルには窺い知れぬ歳月と絆があるようだ。キョンシルには到底、立ち入れぬ確固とした繋がりを見せつけられ、所在なげに立ち尽くしているしかなかった。
 と、和尚がトスの背後を覗き込んだ。
「で、そちらの娘は? まさか、そなたの娘だなぞとは申さんでくれよ」

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