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　それに、母もトスの素性について知っていたとしても、キョンシルにまでは詳細を語らないだろう。しかし、それにしても、母はトスの過ごしてきた歳月についてあまりにも語らなさすぎた。その時、キョンシルは、母もまたトスの過去について殆ど知識を持たなかったのではないかと、ふと、思った。
　ミヨンは自らを厳しく律しはしても、他人には寛容な女だった。そんな母であってみれば、明らかに胡散臭い（？）恋人に対して、過去について問い詰めたりはしないだろう。
　少なくとも、母はそういう女性であったのだ。
　もしかしたら、この海辺の町に滞在している間に、トスの過ごしてきた日々の片鱗に触れ得るのではないか。ひそかに期待してきたキョンシルではあったが、いきなり、その話に触れたことには愕いていた。