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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

「どうかしたの?」
 下男の方に訊ねると、彼は冗談ではなく泣きながら訴えた。
「若さまが急に倒れちまったんだ。一体、どうすりゃ良いんだよう」
―しっかりしなさい。
 キョンシルは下男の背を叩いてやりたいのを堪えて、優しく言った。
「とにかくご主人の様子を見せてちょうだい」
 道に仰向けに倒れている若い男を覗き込む。額には大粒の汗が滲んでいた。額に軽く触れ、手首を取って脈を診る。
 キョンシルは頭上をちらりと見上げ、頷いた。六月半ばの太陽は真上に来て、燦々と降り注いでいる。最早、日中は真夏並の暑さだ。
「暑気当たりね。多分、そんなに大変な状態ではないと思うわ」

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