側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司
どうやらあまり頭の回転の良さそうではない下男に噛んで含めるように言い聞かせ、下男は頷くやいなや、すっ飛んでいった。
―かなり慌てていたようだけど、大丈夫かしら。
キョンシルは一抹の不安を憶えながら、腰にぶら下げた小さな竹筒を手にした。これは携帯用の水筒である。何しろ、この暑さだ。水筒でも持ち歩かねば、たちまち身体中の水気をお天道さまに持っていかれて干物になってしまう。
キョンシルは竹筒の蓋を開き、次いで懐から出した手ぬぐいを水で濡らした。軽く絞ったそれをぐったりと横たわる若者の額に乗せる。更に竹筒をそっと男の唇に当てた。
「冷たい水ですよ。気分が良くなりますから、頑張って少しでも呑んで」
―かなり慌てていたようだけど、大丈夫かしら。
キョンシルは一抹の不安を憶えながら、腰にぶら下げた小さな竹筒を手にした。これは携帯用の水筒である。何しろ、この暑さだ。水筒でも持ち歩かねば、たちまち身体中の水気をお天道さまに持っていかれて干物になってしまう。
キョンシルは竹筒の蓋を開き、次いで懐から出した手ぬぐいを水で濡らした。軽く絞ったそれをぐったりと横たわる若者の額に乗せる。更に竹筒をそっと男の唇に当てた。
「冷たい水ですよ。気分が良くなりますから、頑張って少しでも呑んで」