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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

「それに、あなたが言うほど酷い人じゃないと思うわ、あの小間物屋さん」
 キョンシルは努めて平静に言った。
「身寄りのない子どもたちを集めて育てるなんて、誰にでもできることではありません。あの人が子どもの頃に盗っ人まがいのことをしたのは許されないかもしれないけど、孤児が一人で生きてくためにはやむを得なかったのではないのかしら」
 何だか、あの女タラシの弁護のようになってしまったが、心底からそう思うのだから仕方ない。生まれてからこのかた、他人のために動いたことなど一度もないようなこの貧相な若者があの小間物屋を悪し様になど言える筋ではないだろう。生き方としては、あちらの方がはるかにマシだ。

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