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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 キョンシルはぺこりと頭を下げた。つと首だけねじ曲げて振り返る。
「今度からは昼間の外出はなるたけ避けた方が良いわ。もし、どうしても出かけなければならない用事があるのなら、水筒とよく湿られた手ぬぐいだけは忘れずに、できるだけ日陰を選んで歩くようにした方が良いと思います」
 キョンシルは言うだけ言うと、小走りに駆け出した。若者がくっきりとした眼を見開いて呼び止める。
「せめて名と住まいを教えて」
 しかし、キョンシルのすっきりとした立ち姿は直に人混みに紛れ見えなくなってしまった。
「待って」

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