
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司
キョンシルが押すな押すなの人混みを抜けて小さな吐息をついたのと、声をかけられたのは、ほぼ同時のことである。
「よう」
聞き慣れぬ声に思わずギョッとして身を引くと、前方から低い笑声が聞こえてくる。咄嗟に頬が強ばり、緊張感を全身に漲らせた。
「誰ッ?」
鋭い声で誰何すると、低い笑い声がゆっくりと近づいてくる。
「―あなた」
ますます警戒心を募らせ、隠そうともしないキョンシルに、男はふいに笑いをおさめ真顔になった。
「さっきはありがとよ」
「なに、私は別に改まって礼を言われるようなことなんて、してないわよ」
「よう」
聞き慣れぬ声に思わずギョッとして身を引くと、前方から低い笑声が聞こえてくる。咄嗟に頬が強ばり、緊張感を全身に漲らせた。
「誰ッ?」
鋭い声で誰何すると、低い笑い声がゆっくりと近づいてくる。
「―あなた」
ますます警戒心を募らせ、隠そうともしないキョンシルに、男はふいに笑いをおさめ真顔になった。
「さっきはありがとよ」
「なに、私は別に改まって礼を言われるようなことなんて、してないわよ」
