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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

「だから、僕を見る時間を与えると言っているんだ!」
 何という思い上がった男だろう! 別にキョンシルはそんな時間を望んだわけではないのに。
「とにかく、もうお帰り下さい」
 キョンシルが素っ気なく言うと、ウォンジュンが叫んだ。
「頼む、一度だけで良いから、機会をくれ」
 キョンシルはそのまま本堂を横切って出てゆこうとする。が、途中で背後からウォンジュンに抱きしめられた。
「何をなさるの!?」
 咎めるような声になったのは、この場合、致し方なかったろう。
「だって、理不尽ではないか。僕のことを少しも知ろうとせず、いきなり背を向けるだなんて」

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