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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 今にも泣き出しそうな声音に、流石に申し訳ない想いにはなるが、かといって身体を動かすのも億劫なのに、返事などする気にもなれない。
「―煩い。僕は頭が痛いと何度も言ってるだろう。今は一人にしてくれ」
 しばらく応(いら)えはなく、やがて溜息と共に乳母が室から出ていく気配があった。

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