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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 いや、それをいえば、甘やかされ気随気儘に育った彼は、平素から他人を気遣うとか思いやるといったことには物凄く不慣れだ。他人の方が自分にかしずいて当たり前という認識が彼のすべての行動基準になっている。他人に何かして貰うのは当たり前でも、自分が他人のために何かするのは気が向いたときだけという発想が自然なものだと思い込んでいる。
「若さま。もう丸二日間、殆ど何も召し上がってないではありませんか。このままではお身体を壊してしまいます。旦那さまも心配しておられますよ?」

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