テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 それほどの権力と財力を手にしていた。誰もがソンジュンの機嫌を取り、うまくいけば、彼の手にしている黄金のお零れにあずかろうという魂胆は見えている。
 そう、すべては息子のため。ウォンジュンは実のところ、父親たる彼には似ていない。頑固なところは父親ゆずりなのかもしれないが、白皙の頼りなげな風情は亡くなった妻の風貌を受け継いでいた。
 自分がこの二十年間、必死に守り抜いてきたこの家門と絹店を受け継ぐのはウォンジュンに他ならない。欲を言えば、息子には名門両班の娘を迎えて李氏の家門に更に箔をつけるつもりだった。また、それが息子の将来にも繋がると考えていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ