側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病
沓脱石の手前に紫陽花のひと群れが咲いている。既にうっすらと蒼く色づいた花は、見事に染め上がれば、この町に豊かな恵みをもたらしてきた母なる海と同じ色に変わる。古来から、この町の人は海と共に生きてきた。海のお陰で猟師は漁をし、温かい季候に恵まれているがゆえに農業も発達してきた。
土地の豊饒さを証明するかのように、町外れの畑には夏の今、収穫期を控えたトウモロコシが緑の葉に包まれた黄金色の実を太陽に輝かせている。海と陸の幸の祝福を受け、田舎の小さな町ながらも繁栄してきたのである。
紫陽花の側を白い蝶がひらひらと優雅に飛んでゆく。主人のお出かけと知り、若い家僕が慌てて飛んできた。
土地の豊饒さを証明するかのように、町外れの畑には夏の今、収穫期を控えたトウモロコシが緑の葉に包まれた黄金色の実を太陽に輝かせている。海と陸の幸の祝福を受け、田舎の小さな町ながらも繁栄してきたのである。
紫陽花の側を白い蝶がひらひらと優雅に飛んでゆく。主人のお出かけと知り、若い家僕が慌てて飛んできた。