
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病
二人の暮らす建物が見えてきた。小走りになったキョンシルは扉の前まで来て止まった。室内から人の話し声が聞こえてきたからだ。
―お客さま?
珍しいことではあるが、靴が脱いであるところを見ると、来客中らしい。男物の靴なので、少し安心する。
―私ったら、いやだわ。
トスを訪ねてきた相手が女性ではないと知って、これほど安堵するとは我ながら、現金なものだと思う。
しかし、更に続いて聞こえてきた会話の断片に、キョンシルは頬を強ばらせた。
「その話を聞いた上で、お願いします。どうかキョンシルを私の妻に下さい」
―お客さま?
珍しいことではあるが、靴が脱いであるところを見ると、来客中らしい。男物の靴なので、少し安心する。
―私ったら、いやだわ。
トスを訪ねてきた相手が女性ではないと知って、これほど安堵するとは我ながら、現金なものだと思う。
しかし、更に続いて聞こえてきた会話の断片に、キョンシルは頬を強ばらせた。
「その話を聞いた上で、お願いします。どうかキョンシルを私の妻に下さい」
