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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 この声は―。聞き憶えのある声に、キョンシルは愕然とする。この若い男の声は間違いなくイ・ウォンジュンのものだ。
 どうして、ウォンジュンがトスを訪ねてくるのか。いや、今の科白は、ウォンジュンがキョンシルを嫁に欲しいという内容だった。しかし、いきなり妻に欲しいという話になるのも面妖なことである。そこでキョンシルは数日前、ウォンジュンが寺を訪ねてきたことを思い出した。もしかして、今日、求婚に来たのは、あのときに言った〝好きだ〟という告白からの続きなのだろうか。
 それにしても、出逢ってまだひと月すら経たず、しかも互いに相手について何も知らないというのに、何故、〝好きだ〟とか〝結婚〟という話にまで飛躍するのだろう? キョンシルには、ウォンジュンの性急さには到底ついてゆけそうにない。

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