テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 トスは内心、訝りながらキョンシルの様子を窺っていた。向かい側で飯をかき込みながらも、注意深く器越しにキョンシルを見つめている。
 それに、今日はずっと一日中、寺にいたわけではない。キョンシルは半月ぶりに町に行って、町の賑わいを見てきたばかりだ。これが常なら、夕餉の折は〝頼むから、少し静かにしていてくれ〟と頼みたくなるくらいのはずである。町で見聞きしたあれこれを大きな瞳を輝かせてトスに報告するだろうに、何故、こうもむっつりと押し黙っているのだろう。
 ウォンジュンとの間に何かあったのだとは考えにくい。何しろ、彼は今日、トスをここに訪ねてきたばかりなのだ。結局、キョンシルの求婚については明確な結論は出ないままだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ