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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

―もし、この娘が自分の血を分けた子なら、どうする? 
 何度めになるか知れぬ問いかけを自分に投げてみる。トスは何かに耐えるように眼を閉じた。そうだ、応えなら、とっくに出ている。
 もしキョンシルが実の娘ならば、みすみす幸せになれる機会を逃すなと言うに違いない。トスは小さく息を吸い込んだ。
「キョンシル、働きに行くつもりはないか?」
「働きに?」
 キョンシルは黒い瞳を一杯に見開いている。その可愛らしい顔には〝何で突然、そんなことを言うの?〟とあからさまに書いてあった。
「その、何だ。ずっと辛気くさい寺にばかりいても、お前のような若い娘には退屈だろうと思ってな」

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